瓶詰めにラベル貼り、樽洗浄などの作業に追われていたある日、遂に工場長から声がかかりました。
『入山君もそろそろ仕込み側の仕事してみる?』
ついにきたー!
っと大喜び。
しかし仕込み側の作業は想像以上に神経を使う仕事でした。
遂にビール造りができる!
ビール造りといっても仕込み自体は6時間程度で終わります。
大変なのはそれ以外の準備と洗浄作業。
まずはそこから始まりました。
タンクの殺菌
ビールにとって雑菌は大敵です。
製造工程中に少しでも雑菌が入ってしまうとビール自体が汚染され、最悪の場合廃棄しなければいけません。
ある有名なブルワーさんが言っていました。
『ビール造りにおいて一番大切な事を知ってるか?
1に洗浄、2に洗浄、3、4がなくて5に洗浄だ。』
こう言われる通りビールを使う設備の洗浄はとても重要です。
特にビールを保存するタンクの洗浄、殺菌はとても重要。
まずはそこから教えてもらいました。
洗浄と殺菌は違う!
まず最初に先輩にいわれた事は
『洗浄と殺菌は違うからね』
という事でした。
???
という感じでした。
つまり
■洗浄→汚れを落とす
■殺菌→一見きれいに見える表面にいる菌を殺す事
という事です。
お皿を洗う際に中性洗剤で汚れを落としてハイターで殺菌するのと同じですね。
ビールタンクも同じように洗浄液で内部の汚れを落とし、殺菌液で内部を殺菌します。
タンクを洗う際はこの順番を間違えてはいけないのはもちろんの事、時間、温度など細かく決められていました。
特に殺菌作業は気を使います。
自分の手は綺麗か、タンク内部は全て殺菌されているか、薬品残りはないかなど
細心の注意を払いながら行いました。
いよいよ仕込み作業
タンクの洗浄、殺菌も覚えたので、いよいよ仕込みを教えてもらう事になりました。
最初は先輩の後ろをついていきながらひたすら覚えていく。
見学は何回もしていたものの、実際に教えてもらうと何が何だがさっぱり…
クラフトビールは手作業だからこそ、造る度に毎回微妙に味が変わります。
人間が行う作業ですからしょうがないのですが、同じスタイルを造る場合極力そのブレは少なくしなければいけません。
だれが仕込みを行っても同じ味になるよう、工程は事細かく決められていました。
バルブを回す順番や角度、時間管理、水の温度など、数字でチェックしていきながらミスのないよう作業を行っていきます。
例えばですが『仕込み釜の中身が全て排水されるバルブ』もあります。
間違えて回してしまえば一瞬でパーです。
先輩の後ろをみながら必死で工程を覚えました。
1人立ち
しばらくして先輩との仕込み作業もなれてくると、いよいよ1人で任される時がきました。
今までは先輩と一緒に作業をしていたので間違いがあれば指摘してもらえます。
しかし1人で行う場合全責任が自分の肩に乗っているわけです。
昔社長に言われた一言がありました。
『仕込みを任せる』という事は『託す』という事だからね
その時になってこの言葉の意味がわかりました。
大山Gビールというブランドは今まで長い歴史をかけて積み上げられたもの。
そのビール造りを任されるという事は長い歴史のバトンを渡されるという事です。
緊張でぶるぶると震えながらその日は仕込みを行いました。
その日はクタクタの疲労感と共に、長い道のりを経て、やっとここまで来たという達成感がありました。
ここまで来た
ビール造りをしたい!と考えてから実際にビール造りができるには長い年月がかかりました。
いきなり頂上にたどりつく事ができないように、1段1段階段を登っていくしかありません。
1つ1つの仕事が全て必要だったんだな、と思えました。
そしてビール造りは1人で行うものではありません。
1人1人が持ち場の仕事を責任持って行う事で美味しいビールが出来上がります。
自分をここまで育ててくれた大山Gビールの皆さんには本当に感謝です!